イエダニ
出典:日本ペストコントロール協会
生態
ダニ類は脱皮して発育し、発育期は一般的に卵→幼虫→若虫→成虫に大別されるが、種によって 一様ではない。 本種では若虫期が第1若虫、第2若虫と2期みられ、通算5期で成虫となる。 ネズミを吸血した雌はネズミから離れ、巣の中で数日間で20個程の卵を生み、一生に約100個前後 の卵を生むことができる。 卵は1~2日で孵化して、3対脚の幼虫となり、吸血せずに約1日で脱皮して4対脚の第1若虫 となる。この若虫は1回吸血して脱皮して、第2若虫となり、吸血しないまま脱皮して成虫となる。 イエダニは単為生殖的に発育し、第2若虫からは雌ばかりが出現することがある。 卵から成虫までの期間は11~16日であり、成虫になったダニは1~2日で交尾を終え、夏期によく 繁殖する。
形態
成虫は未吸血時には体長約0.7~1.0mm、体幅約0.3mmで楕円形をしている。 体色は乳白色~淡褐色を呈しています。 吸血すると腹部は丸く1.0~1.3mmほどに膨満して、赤黒い色となる。
分布・宿主
全世界の温・熱帯で家ネズミ(クマネズミ属)の巣の中に繁殖して、本来の宿主はネズミであるが、 時として頻繁に人を吸血して被害を及ぼす。
被害・病原性
人となじみの深い不快なダニで、刺されると激しい痒みの強い皮膚炎を起こす。 近年もネズミが都市の繁華街などで多くはびこっていて、近隣の家屋へ侵入してきたネズミに巣を 作られると、本種のダニによる吸血被害(かゆみ)に悩まされることとなる。 ネズミの巣の中で大繁殖したダニは、巣から溢れ出して天井裏から”ポトポト”と落ちて、人を刺し、 激しい痒みを伴う小発赤、皮疹を特に腹部のへそ周辺部、わきの下、陰部周辺などに起こす。 また、小児、女性は症状が激しく、襲われやすい。 特にネズミが死んだとき、ダニの這い出し現象により一時的に集中して被害を受ける。 実験的には、本種の刺咬(吸血)により発疹熱リケッチアを媒介しうる。
駆除
ネズミの駆除が肝要で、巣を見つけたら消去して、周辺部に這い出しているダニに乳剤を散布する。 また、死んだネズミを発見したら除去とともにその周辺部も殺虫剤処理をする。 天井裏から落下してきたダニも考慮して、部屋にも殺虫剤処理が必要となる。 もし、部屋が和室であるなら、畳を全部起こして加熱処理か殺虫剤処理も併用して行う。 使用する殺虫剤は、専門の業者に相談するとよい。
ワクモ
出典:日本ペストコントロール協会
生態
雌は吸血後1~2日で、宿主の巣やその付近の間隙、堆積物などに産卵する。 夏は2~3日後に3対脚の幼虫が孵化し、幼虫は吸血せずに、第1若虫へ脱皮、吸血後に第2若虫、 さらに吸血後成虫に脱皮する。この間の発育期間は7日程度で、成虫は吸血しなくても4~5ヶ月 以上生存できる。日中は鳥の巣や鶏小屋の割れ目などに潜んで、夜間吸血する。
形態
体長0.7~1.0mm、体幅0.55~0.65mm。体色は未吸血時には無色~淡褐色。吸血すると赤から 黒赤色へと変化すし、腹部は膨満する。 本種はイエダニ、トリサシダニとよく類似するが、きょう角の第2節は細長く伸長し、先端に微小な 指状突起がある点で異なる。だだしこの同定は倍率の高い顕微鏡が必要となる。
分布・宿主
ニワトリの害虫で、世界的に分布し、日本でも全国的に発生しており、ニワトリの外部寄生虫として 重要で、人を頻繁に刺す。 また各種の野鳥、ハト、ムクドリやスズメなど家屋に営巣する鳥類や飼い鳥に寄生する。 巣が放棄されたり、過剰に繁殖したとき屋内に侵入して人を刺し、かゆみを起こす。 発生は梅雨期から晩夏にかけて多く、周辺の住宅などへ細塵や羽毛に絡み付いて一緒に分散・ 飛来する。
被害・病原性
ニワトリに大発生して激しく吸血するので、トリは衰弱して発育が遅れ、産卵が減少するので 生産性が低下する。ひな鳥は貧血のため衰弱死することもある。鶏舎に入ったり、隣接した人家 に侵入した本種ダニに吸血され、激しい痒みを伴う皮疹を作るなどの刺咬被害が起こる。 本種は幼虫以外の発育期はすべて吸血するので被害が大きい。
駆除
室内に侵入したときは、イエダニの駆除法に準じて処理する。
ツメダニ
出典:日本ペストコントロール協会
生態
自由生活性で、室内では室内塵中のチリダニやコナダニ類を捕食し、これらダニ類の天敵となる。 卵~成虫への発育期間は♀で平均26.6日。♂は22日とみられている。 単為生殖ではすべて雄が発生する。高温に強く、30~32℃でも盛んに繁殖する。
形態
雌は体長0.5~0.6mm、淡黄橙色で細身縦長で、脚はほぼ透明である。ツメダニ科のダニは触肢 が大きく強大であることが特徴であるが、本種では比較的細く、爪は基部に3個のこぶ状の飾爪が ある。雄は体長0.4mm前後で小形である。外部生殖器を除いて雌によく似ている。
分布・宿主
日本では昭和50年頃から都市部の住宅で、ダニによるとみられる皮疹が多発している。 その原因は南方から輸入された稲藁にて作られた畳によるものとされ、新しく和名が与えられた。
被害・病原性
人を刺して起こす刺咬症は、激しい痒みを伴った皮疹が起こるが、吸血はしない。 それは、人を刺す口器が本腫は短く、血管まで到達せず、体液にとどまるためである。 特に輸入藁を使った畳の上で就寝していると被害が続発している。 ツメダニは、チリダニやコナダニ類を刺すときに唾液を注入するが、人を刺すときにも唾液を注入し、 その唾液がアレルゲンとなって炎症反応を起こし激しい痒みが伴う。
駆除
本種は畳の中で産卵し、表面に這い出て偶発的に人を刺すため、畳の中心部まで殺卵効果が 高められる処理を施す必要がある。 一般に市販されている殺虫剤(畳注入式)では、圧力が弱く、畳の芯まで全面的に薬剤を到達 させるのは困難であるため、畳中心温度が60℃になる「加熱処理」が殺ダニ・殺卵効果も得られて 理想的である。
タカラダニ
出典:日本ペストコントロール協会
生態
成虫、若虫は地中や地表の石ころの多い荒地のような場所に生息して、活発な住生活を営み、 微小生物を捕食する。 近年日本の都市部で、苔などで覆われて湿った古いコンクリート住宅の屋外壁、屋上、プール サイド、病院、工場などで時に大発生する。特に日当たりのよい面に多く見られ、発生時期は 6月と7月に限られるようである。 生息範囲は都市部のみではなく、山間部の石垣などにも広く見られるようである。 生活史は卵、幼虫、若虫、成虫の各期があり、第1~第3若虫期は静止期である。 年1世代で、春先幼虫が孵化し、5~6月に成虫となり、盛夏までに産卵して親虫は死滅し、卵で 越冬。タカラダニ類の生態については不明の点が多いが、最近、本種は捕食性ではなく菜食性 ではないかと吉川(2001)は提唱している。このダニが多く見られるのは花壇の近くであり、這い 登っている壁面には地衣類が繁殖していることを目撃するので正当性があるものと考えられたが、 芝(2002)はさらに、花粉や胞子も食することを記しており、幼虫から花粉食と考えられる。
形態
近年、都市部などでビルやブロック塀の壁面に赤くて小さな虫が「ソソクサ」と這い回っているのを 見ることがある。 成虫の体長は1.0mm程度のダニで卵円形をしている。この仲間のダニは全体に鮮紅色で、鮮やか な朱赤色を呈するものが多い。
分布・宿主
以前はスイスに分布していたが、日本では本州、四国、隠岐島に分布すると記されていたが、 近年、北海道から沖縄にかけて広く分布している。
被害・病原性
人には全く直接被害を与えないが、ブロック塀や外壁面、ビルの屋上などに多数の赤色のダニ が現れるので、恐怖感から駆除依頼がある不快害虫である。
駆除
エクスミン水性乳剤、ピレスロイド系乳剤、残効性のある乳剤などの殺虫剤を散布するとよい。 本種は殺虫剤に対する感受性は高いようである。 ビルなどの高い建物の壁面に発生した場合、水圧の高いホースで散水して洗い流すのもよい。
ダニ駆除の流れ
ダニの駆除は、そのダニの種類によって異なります。以下のフローは「イエダニ」「ツメダニ」 「コナダニ」等を対象とした方法です。
- お問い合わせ
- 現場調査
- 同定検査
- ダニの種同定
- 施工方法・薬剤の選定
- 施工日時の連絡
- ダニ除去施工
- タタミ中央温度測定
- 駆除効果の測定
前述に記した「ワクモ」や「タカラダニ」はその都度駆除方法は記載してあるので、参考にしてください。